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地域、勤務先の規模、薬剤師の年収を決めるものとは
薬剤師と言えば給与が高いイメージですが、思っていたより安い、という声も聞かれます。
実際のところどうなのでしょうか。
厚生労働省が毎年発表している『賃金構造基本統計調査』によれば、令和元年の薬剤師の平均年収は、約562万円でした。
これは従業員10名以上の事業所を対象に、様々な職種や業種の賃金を調査したものです。
薬剤師に関しては、病院・薬局・ドラッグストアなどが一括りになっています。職場や職種ごとには調査されていないので、この金額が高いと感じる人も安いと感じる人もいるでしょう。
規模(従業員数)ごとに見ると、
企業規模 | きまって支給する現金給与額 | 年間賞与その他特別給与額 | 年収(概算) |
---|---|---|---|
1,000人以上 | 37.3万円×12か月 | 88.2万円 | 約536万円 |
100人~999人 | 39.7万円×12か月 | 72.3万円 | 約549万円 |
10人~99人 | 44.0万円×12か月 | 89.5万円 | 約618万円 |
となっており、規模が小さい職場の方が、年収は高くなっています。
薬剤師の給与は、総合病院よりも中小の専門病院、大規模チェーン薬局より中小の薬局の方が高い傾向があり、それが反映されたものと考えられます。
また、都道府県別の年収も公開されており、かなりばらつきがあるのが分かります(詳細は次項目)。
薬剤師が年収アップする方法とは
年収アップ作戦1:地方の薬局で働く
薬剤師の給与事情でよく言われるのは、大都市より地方の方が給与が高いということです。
一般的には大都市の方が給与額は高いものですが、薬剤師に関しては真逆のことが言われています。
大都市は求人数も多いものの、薬剤師も多いため、飽和状態。
一方、地方は薬剤師が不足しているので、高い給与を提示してでも薬剤師を確保したい、という事情があるようです。
各都道府県の薬剤師の年収を見てみましょう。さきほどとと同じ、賃金構造基本統計調査(令和元年)をもとに集計しています。
上位10位は以下の通りです。右側には、薬剤師以外の調査対象職種もすべて含めた、その都道府県の平均金額も掲載しました。
薬剤師推定平均年収ランキング | 薬剤師以外も合わせると… | |||
---|---|---|---|---|
都道府県名 | 薬剤師平均 (万円) |
全職種平均 (万円) |
||
1位 | 静岡 | 699 | 469 | 16位 |
2位 | 長野 | 690 | 460 | 22位 |
3位 | 高知 | 643 | 406 | 37位 |
4位 | 島根 | 626 | 413 | 35位 |
5位 | 愛知 | 622 | 545 | 3位 |
6位 | 青森 | 620 | 371 | 47位 |
7位 | 秋田 | 619 | 379 | 44位 |
8位 | 宮城 | 610 | 464 | 18位 |
9位 | 三重 | 601 | 498 | 7位 |
10位 | 山形 | 595 | 388 | 42位 |
薬剤師の都道府県別年収ランキングは、一般的な年収ランキングとは明らかに様相が異なります。平均年収47位の青森県が、薬剤師に限っては第6位なのですから驚きです。
確かに、高収入の求人を検索してみると、地方勤務の求人で、年収700万、800万などというものも見かけます。さらに住居手当や引越し代まで負担してくれたりと、好条件のものがあるのです。
ただし、地方だから必ず給与が高いとも言えません。
例えば、人口が最も少ない鳥取県は年収ランキング33位、2番目に少ない島根県は年収ランキング6位と比べると、かなりの開きがあります。県内の薬剤師の人数を比較すると、鳥取県の方が多いので、「人数が多い=薬剤師は足りている=給与を高くしなくても大丈夫」という状態だということも一因として推測できます(厚生労働省『平成30年(2018年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況』より)。
都道府県ごとの給与事情は様々です。
地元に大学薬学部があり薬剤師が充足しているとか、そもそも薬局数が少なく薬剤師が十分足りているとか、いろいろな要素で変わってきます。
全国チェーンの大手薬局が多いところは、年収も低くなりがちです。大手の給与は規定で一律になっていることが多いからです。対して、地域密着型の中小規模薬局が多い地域は、年収も高くなることが多いです。
また、同じ都道府県の中でも都市部と郊外とでは薬剤師の給与も異なってきます。
都市部は、薬剤師が多くいるので年収が低め。中心部を離れた交通の不便な地域では、薬剤師が不足しているので年収が高め、という傾向が見られます。
なお、地方の薬局で働くデメリットとしては、一人薬剤師になる可能性が大きく、自由に休めない可能性があります。
仕事量自体はあまり多くないことがほとんどですが、確認しておいたほうがよいでしょう。
目安は1日に対応する処方箋の平均枚数です。交通は不便なところが多く、運転免許は必須です。
また、地域に根差した薬局は人間関係も濃密なので、うまくいかないと続けていくのはかなり困難になるでしょう。
高齢者が多いので、在宅医療支援を行う薬局も多く、より高いコミュニケーションスキルが求められると言えます。
高収入だけでなく、田舎が好きでゆったり暮らしたい、地域医療に貢献したい、といった動機があれば、地方を視野に入れて活動するのもよいでしょう。
とはいえ、全国の求人をチェックするとなると、なかなか大変です。薬剤師向け転職サイトを利用する場合は、コンサルタントに地方で働くこともOKであることと、希望年収を伝えておきましょう。
年収アップ作戦2:管理薬剤師になる
薬局やドラッグストアの責任者として、必ず一人置く必要があるのが「管理薬剤師」です。薬剤師資格以外に、特に必要な資格はありませんが、だいたい勤続3年くらいで任命されることが多いようです。
管理薬剤師になれば毎月手当が付くので、年収も上がるというわけです。管理薬剤師として経験を積んでから転職すると、給与の交渉に有利になります。特に地方の小規模の薬局などでは、薬剤師一人体制のところも多く、必然的に管理薬剤師が求められるわけです。
ただ、管理薬剤師の求人を見てみると、給与は高いものあればそうでないものもあり、かなりまちまちです。
管理薬剤師の経験はなくても可、つまり管理薬剤師候補、という求人は給与も抑えめ。管理薬剤師になった後はいくら、と明記されているものもありますが、そうでないものは再度交渉が必要になるでしょう。
また、給与が高いものは、一人薬剤師体制や、交通の不便な立地など、応募者が集まりにくい条件も併せ持っていることが多いようです。
一方、給与がさほど高くないところは、残業がほとんどないとか、休日が多め、というものも。
管理薬剤師と言うと責任が重く、拘束時間が増えるイメージがありますが、薬局によって様々で、ゆったり働けるというケースもあるのです。自分にとって、譲れる条件と譲れない条件を吟味する必要があるでしょう。
ちなみに、管理薬剤師になると残業代は発生しない、というケースも多いようです。
管理薬剤師を管理監督者とみなすかどうかは、法的判断の分かれるところです。しかし、残業代分を十分に上乗せした給与を提示され、残業代はなし、という内容の契約に合意していたら、それは違法ではないとみなされる可能性もあります。
「せっかく年収アップを目指して転職したのに、実質ほとんどアップしていなかった…」
そんなことのないように、事前の交渉でしっかりと確認しておきたいところです。
年収アップ作戦3:派遣、パート薬剤師として働く
派遣
薬局やドラッグストアであれば、派遣という働き方もあります。時給は総じて高め。地域にもよりますが、平均時給2,500円から3,000円くらいです。
時給3,000円+残業なしで週5日働いたとして、3,000円×8時間×20日=480,000円、年収576万円となり、これは全国平均で見れば9番目の高さです。時給4,000円ならば、同じ条件で月収640,000円、年収768,000円となり、全国平均で見れば2位に相当します。
正社員でこの収入を得るのは、なかなか大変です。
では、なぜ派遣薬剤師が必要とされるのでしょう。
慢性的な人手不足で、即戦力の薬剤師を求めている職場が多いからです。
そのため、それなりの経験と適応力が求められます。メリットは残業がないことと、嫌なら次の更新をしなければよいので、多少人間関係などに難があっても割り切って働けることです。
福利厚生も派遣元の制度が利用できる場合がほとんどです。
派遣はたいてい3か月ごとに契約更新というスタイルが多いのですが、求人の中には期間限定のものもあります。
例えば2か月限定で、契約期間が終わったら、お互い気に入っていても、そこでお仕事は終了となるものです。こういった求人はさらに時給が高めのことが多く、短期間でとにかく稼ぎたい、という人にぴったりです。
デメリットとしては、ボーナスがないこと、次の仕事の保証がないなど不安定であること、正社員に戻りにくくなることがあげられます。
ちなみに病院・診療所の派遣薬剤師は、直接雇用前提の紹介予定派遣のみ、認められています。時給は、ドラッグストアや薬局よりは低めです。年収アップというよりは、どうしても病院で働きたい人が、ゆくゆくは正職員を目指すための方法と言えるでしょう。
パート
パートはどうでしょう。こちらも時給は低くなく、残業がないので、家庭や育児と両立したい人などには魅力的な働き方です。時給の相場は、地域にもよりますが2,000円以上です。大型チェーンなら正社員は異動や転勤もありますが、パートならそれもありません。
デメリットとしては派遣同様、ボーナスがないこと。また、あまり長時間働くことは念頭に置かれていないので、総額としては稼げないということです。そのため、副業として働いている人がいるようです。本業が終わってから、短時間働いたり、土日など曜日限定で週1回働いたりしているのです。
仕事を見つけやすいのはドラッグストア。夜遅くまで空いているところが多いからです。夜間は時給がアップするところもあるのでねらい目ですね。
土日であれば、調剤薬局もありでしょう。例えば、時給2,000円で、夜間3時間、週3回働くとしたら、2,000円×3時間×12=72,000円。今働いている職場で、月収をこれだけ増やすのはなかなか難しいことですよね。また、複数の職場を経験し成長できる、気分転換になる、など収入アップ以外のメリットもあります。
ただ、副業が認められているかどうかは、今の職場の就業規則を必ず確認しましょう。
また、管理薬剤師は副業ができないので気を付けましょう。
まとめ
では、年収アップのコツと注意点をおさらいしてみましょう。
- 地方勤務は高収入多し! 免許とコミュニケーションスキルは必須
- 管理薬剤師になってから転職すると好条件のチャンスあり
- 管理薬剤師は残業代がもらえるか必ず確認
- 管理薬剤師は副業禁止
- 短期集中で稼ぐなら、派遣薬剤師もあり
- 副業はドラッグストアの夜間が高時給
こうしてみると、よりよい転職、年収アップには交渉力が欠かせません。交渉は自分自身で行ってもよいのですが、印象が悪くなる場合もあり、難しいものです。
また、好条件なレア求人や、全国の高収入求人は、自分で探すのは限界があります。
そして、勤務地や職種を変えたくはない人も、転職するならやはり収入アップしたいと思いますよね。
そんな時はやはり薬剤師の転職サイトを利用するのがおすすめです。自分の希望額や条件を伝えて、それをクリアできる案件のみ、紹介してもらいましょう。
薬剤師向けおすすめ転職サイト比較表
最後に、薬剤師向けの転職サイトを紹介します。以下のサイトはすべて転職サポートがあり、完全無料で利用が可能です(比較表最終更新:2020/9)。エージェント系 | 求人の豊富さ | サービス・機能 (無料) | 得意分野・特徴 | 比較 詳細 |
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