厚生労働省が公表している年齢別転職入植者数(『雇用を取り巻く環境と諸課題について』内)を見ても分かるとおり、近年、30代以上の転職は以前と比べても一般的なものになってきました。しかし、30代の転職は、20代のものとは異なる点もあります。
20代の場合は、未経験分野での採用も比較的多く存在します。
しかし、30代になるとある程度今まで積み上げてきたノウハウや知識を求められるケースが多くなってくるのです。
つまり、異業種の転職はなかなか難しいものとなり、これまでと違う仕事であっても今までつちかってきたスキルや経験を活かした場を探すことが求められてきます。
ここでは、それを踏まえて転職活動をするうえで、30代にとって利用しやすく実績もある転職サイト・エージェントを紹介していきます。
転職方法はどうすべきか:直接応募?エージェント経由? それともスカウトを利用すべき?
転職活動にはいくつかの方法があります。
どのスタイルで転職をしていくのか選ぶことになりますので、まずはそれぞれの方法とその特徴について説明していきます。
直接応募の転職サイトで探す
まず一つ目が、自分で求人案件を探して応募する進め方です。
履歴書などの応募書類を作成し、書類選考を受け、面接日程を自分で調整していきます。
基本的に後述のエージェント系のような転職サポートなどはありませんので、自主的に進めていく必要があります。
こんな人におすすめ
- 自分の働きたい職場の条件がはっきりと決まっていて、特にキャリアアドバイザーに相談などを受ける必要がないと考えている人
- 転職サポート(応募書類添削、面接対策、日程調整、年収交渉、退職の助言など)は特に必要ないので、自分自身だけで進めたい人
- 公開求人のなかから転職先を探せればいい人
- 保存した検索条件の新着求人をメール通知しておけるので、「今すぐにではないがピンときたときに転職活動をしたい」と考えている人
おすすめの直接応募の転職サイト
直接応募系 | 公開 求人数 | サービス・機能 (無料) | 得意分野・特徴 | 比較 詳細 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|
こだ わり 条件 検索 | 自己 分析 診断 ツール | 検討 リスト | 検索 条件 保存 | ||||
リクナビNEXT | 132,000 北海道7,200(2024/08時点) (※RN1) | 20代~40代 スカウトメール※RN1 参照:リクナビNEXTトップページに記載のある数 | |||||
doda | 7,400 北海道1,100(2024/08時点) (※DC1) | 20代~40代 スカウトメール |
30代の求人数が豊富なのが以上の転職サイトです。
3つとも後述のスカウトサービスでの転職活動としても利用でき、さらにdodaは転職エージェントとしても利用できます。
エージェントを利用するのが望ましい人
次に、転職エージェントを利用した転職活動について説明していきます。
流れとしては、サイトから登録し、その後カウンセリング・面談をキャリアアドバイザーと行うことになります。
エージェントは各企業からもこういった人材が欲しいという相談を受けているため、双方の要望が一致しそうなマッチングを提案してくれます。
その候補の中から、自分に合いそうな企業を選び、エントリーする流れになります。
こんな人におすすめ
- 自分だけでは転職活動に不安がある。現在の仕事の悩みや転職で求める条件について、事細かに相談したい人
- 忙しくてあまり転職に時間が割けない人(エージェントとの面談は融通が利き、さらに日程調整などのサポートも行ってくれるため)
- その他、応募書類の添削や面接対策、年収交渉なども取り持ってほしいと考えている人
- 豊富な非公開求人からも転職先を探したい人(エージェントには直接応募系サイトなどでは表に出てこない求人が非常に多く集まっている)
おすすめのエージェント系転職サイト
エージェント系 | 主な利用者層 | 公開求人数 (各サイト求人検索より) (募集終了含む) | 得意分野・利用者特性・拠点 (更新年月) | 比較 詳細 |
---|---|---|---|---|
リクルートエージェント 北海道支社 | 転職者全般 | 399,900 北海道8,900(2024/08時点) | 20代~30代 40代 ハイキャリア20代~40代 コンサル職も豊富 拠点:東京、札幌、仙台、宇都宮、さいたま、千葉、立川、横浜、金沢、新潟、長野、静岡、名古屋、京都、大阪、神戸、岡山、広島、高松、福岡厚労大臣許可番号: 13-ユ-010258 | |
LHH転職エージェント | 転職者全般 | 16,100 年収UP率 62%(※Lt1) | 20代~30代 40代 ハイキャリア30代後半~40代 対応エリア:1都3県、関西、東海※Lt1 参照元:LHH転職エージェントトップページ(2023年4月) 厚労大臣許可番号: 13-ユ-010386 | |
ランスタッド | 転職者全般 | 5,800 | 20代~30代 40代 Iターン・Uターン 注力エリア:東京、大阪、愛知、宮城、栃木、埼玉、千葉、神奈川、静岡、三重、岐阜、京都、奈良、兵庫、滋賀厚労大臣許可番号: 13-ユ-010554 | |
doda 北海道第二オフィス | 転職者全般 | 236,600 北海道7,000(2024/08時点) | 20代前半 20代後半~40代 ハイキャリア20代~40代 スカウトメール 直接応募も 中心となる採用エリア:関東、関西、東海 拠点:東京、札幌、仙台、横浜、静岡、名古屋、大阪、京都、神戸、岡山、広島、福岡、鹿児島厚労大臣許可番号: 13-ユ-304785 | |
hape Agent(エイプエージェント) | 若手営業職 | | 20代~30代前半 30代後半~40代 営業職 営業職 未経験OK 拠点:東京、大阪、名古屋、福岡 |
やはり以上のような大手エージェントは求人案件数も多く、専門分野のキャリアアドバイザーや各種採用における対策なども体制がしっかりしています。また、全国の都市部に拠点があること点も強みです。
あくまで傾向ですが、dodaはアラサー(25~35歳あたり)を得意としています。
特に管理職・専門職に強いおすすめ転職エージェント
エージェント系 | 主な利用者層 | 公開求人数 (各サイト求人検索より) (募集終了含む) | 得意分野・利用者特性・拠点 (更新年月) | 比較 詳細 |
---|---|---|---|---|
パソナキャリア (ハイクラス視点) | 転職者全般 マネジメント職 専門職 | 37,900 年収UP率 61.7%(※PCh2) | 20代~30代前半 30代後半~40代 ハイキャリア20代~40代 素早い対応 管理部門に強い 拠点:東京、大阪、名古屋、静岡、札幌、仙台、茨城、富山、岡山、広島、福岡※PC2 参照元:同サイト内のパソナキャリアの強み 厚労大臣許可番号: 13-ユ-010444 | |
JACリクルートメント | 役員・幹部 マネジメント職 専門職 | 多め | 20代~40代 ハイキャリア30代~50代 管理職 専門職 外資企業求人 海外勤務 拠点:東京、仙台、さいたま、横浜、静岡、浜松、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡厚労大臣許可番号: 13-ユ-010227 | |
アクシスコンサルティング | コンサル ITエンジニア | 非公表 | ハイキャリア20代~30代 平均支援期間3年(※AC1) 経営企画・事業企画 BIG4求人 コンサルファーム求人 IT求人 拠点:東京、大阪※AC1 参照元:アクシスコンサルティング(トップページ) 厚労大臣許可番号: 13-ユ-010759 |
大手のパソナキャリアは管理職や専門職の求人も総じて多く、年収アップ率も高いのが特長です。外国語を活かしたい場合はJACリクルートメント、コンサルファームの場合はアクシスなど、それぞれ強みがあります。
スカウトサービスを中心に行う方法も
最後に、スカウトサービスを利用した転職活動についても説明します。
この方法は、まずスカウトサービスを提供している転職サイトにおいて、しっかりと経歴情報を記載することがスタートラインとなります(これを行わないと十分なスカウトを受けることは非常に難しくなります)。
その経歴情報をベースに、企業側から条件に合う人にアプローチが来るというものです。
こんな人におすすめ
- ある程度経歴に魅力的な内容が書ける人
- 自分の市場価値がどの程度か知りたい人、どんな企業が自分に興味を持っているのかを知りたい人
- 受動的に転職活動を進めたい人
また、すでに年収500万円以上のハイキャリア層・エグゼクティブ層の人は、それに特化したスカウトサービスの転職サイトを利用するという選択肢もあります。
それも合わせて、次の項目ではスカウトサービスの転職サイトを紹介します。
おすすめのスカウトサービス
スカウト | スカウト求人の豊富さ | サービス・機能 (無料) | 特長 | 比較 詳細 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
企業から スカウト | ヘッドハンター等 からスカウト | 個別送信 オファーも | バレ防止 | |||
リクナビNEXT | 20代~40代 利用企業は2万社以上(※RNo1) 書類通過率は通常応募の1.4倍(※RNo2) 特別オファーあり 企業ブロック機能※RNo1 参照元:オファーページ(ログイン前) ※RNo2 参照元:同ページ(ログイン後、2020年4月〜2021年3月実績) (2024/06時点) | |||||
ビズリーチ(ハイクラス層) | ハイキャリア20代~40代 面接確約オファーもあり 企業ブロック機能 ヘッドハンターの評価が分かる ヘッドハンター気になるリスト機能 1/3以上が年収1000万以上の求人(※BRs1)※BRs1 参照元:ビズリーチのトップページ (2024/06時点) | |||||
doda | ― | 20代~30代 40代 ハイキャリア20代~40代 面接確約オファーもあり 企業ブロック機能 |
ビズリーチはハイクラス・エグゼクティブ層向けが中心となります。
リクナビNEXTとビズリーチは、企業だけでなく提携のエージェントからもスカウトを受けることがあります。
ちなみに、スカウトサービスについて「経歴を登録したら今勤めている会社にばれちゃうんじゃないの?」と不安になる人もいます。
しかし、上の比較表にもある通り、どのスカウトサービスにも指定した企業からの閲覧をブロックする機能がありますので、安心して利用することができます(もしブロック操作をしなくても氏名などは企業側は閲覧できません)。
30代の平均年収は?
30代の平均年収はどのくらいでしょうか? さまざまなデータがありますが、国税庁『令和2年分 民間給与実態統計調査』によると、以下のようになります。
年代 | 男性 | 女性 | 合計 |
---|---|---|---|
30代前半 | 458万円 | 309万円 | 400万円 |
30代後半 | 518万円 | 311万円 | 437万円 |
(参考)全年齢 | 532万円 | 293万円 | 433万円 |
20代の平均年収からも上がっており、男女ともに全年齢の平均に近い数字となっていることが分かります。
なお、女性の年収が男性と比べて低い理由として、非正規雇用の割合が高いことや、女性の管理職が格段に少ないことが、一般に挙げられています。それらは、総務省『労働力調査(基本集計)』と『男女共同参画白書 令和2年版』でも確認できます。
30代の転職で年収アップは期待できる?
それでは、30代で転職をすることで年収アップは期待できるでしょうか? もちろんこれまで培ってきた経験やスキルなどにも大きく影響するので一概には言えませんが、厚生労働省『令和2年転職者実態調査の概況』内の「直前の勤め先及び現在の勤め先の状況」によると、「転職者の労働条件(賃金)の変化」を確認することができます。
増加した | 変わらない | 減少した | 不明 | |
---|---|---|---|---|
30~34歳 | 48.6% | 18.4% | 32.8% | 0.2% |
35~39歳 | 40.6% | 20.5% | 37.7% | 1.2% |
(参考)全年齢 | 39.0% | 20.2% | 40.1% | 0.7% |
上の表のとおり、全年齢と比べても比較的年収アップは期待できることが分かります。
30代の転職活動で知っておきたいことまとめ
20代の転職活動と大きく異なる点
20代と30代では、転職活動をするうえで絶対に知っておきたい違いがあります。
20代では「この人は伸びそうだ」というポテンシャルで採用されることもありますが、30代ではそういった成長性よりも即戦力として活躍できるかという点が重視されるようになります。
異なる業種や職種への転職は20代ほど簡単ではなくなり、もしする場合は年収の大幅ダウンも受け入れる必要があります。
「30代の転職においては同業種・同職種が無難」とも言われています。
企業はどんな30代人材を求めているか
人材に求める条件は求人の数だけ存在しますが、大きな傾向として言えるのは「これまでのキャリア」が評価対象となるということです。
繰り返しになりますが、求められているのは即戦力であり、社内で研修・教育しなくても動いてくれる人材です。
そのため、今まで積み重ねてきたスキルや経験を、より具体的な例を交えて伝えることが最も大事なことの一つと言えます。
また、30代後半においては、転職活動ではマネジメント経験があると良いです。今まで積み重ねてきた実績やマネジメントスキルが評価されれば、転職による年収アップも充分に期待できます。
一方で、「未経験可」という求人においても、30代が応募するのはなかなか厳しいことが多いです。これは異業種転職・異職種転職にも言えることですが、20代のときのように若さや柔軟性・成長性を期待されることはなくなりますので、今までの経験をどう伝えるか、どう活かすか、という点を軸にして転職活動を進めるのが王道となります。
30代の転職準備はどんなことをする?
「令和2年転職者実態調査の概況(個3.転職について)」に、30代の転職者がどのような準備をしたのか、その調査結果が公表されています。
その結果が以下のとおりです。
転職準備活動を行った人の内容 | 30歳~34歳 | 35歳~39歳 | 全年齢 |
---|---|---|---|
産業・職業に関する情報等の収集をした | 51.4% | 43.0% | 42.9% |
キャリアコンサルティングを受けた | 19.7% | 13.9% | 16.0% |
今の会社で役立つ資格・免許を取得した | 11.8% | 13.5% | 13.9% |
就職ガイダンスや適性・適職診断等を受けた | 14.2% | 10.2% | 12.9% |
資格、知識等を取得するため通信教育等で勉強した | 12.9% | 9.8% | 10.3% |
資格、知識等を取得するため学校等に通った | 9.5% | 8.2% | 9.8% |
職業能力を向上させるため公共の施設を利用した | 4.9% | 10.5% | 7.6% |
その他 | 19.1% | 25.2% | 22.4% |
30代の転職理由に多いものは何があるか
30代の転職理由として多いのが「仕事内容」や「キャリアチェンジ」を理由としたものです。
「もっと自分のスキルを高めたい」「成長できる職場で働きたい」というのは、今後も自分の市場価値を高めておくことで「将来にどのようなことが起こっても安定した収入を得られるようしたい」と考えるなかでの自然な流れなのかもしれません。
また、それ以外の転職理由には「給与や待遇の改善」「労働環境の改善」「会社の将来性」などがあります。
もし妻に転職を反対されたら…
自分は転職をしたいが妻に反対されている、ということもよくあります。
年収が下がるおそれがある場合や、転職によってライフスタイルが大きく変わる可能性がある場合は、しっかりと話し合うことが大切です。
特に収入の減少は子どもの養育費や住宅ローンなどにも関係します。
面倒くさく感じるかもしれませんが、どの程度の収入と支出があり、どのくらい収入があればOKなラインかについて、転職活動をする前に共通認識を持っておくことで、かえってスムーズな転職活動ができる場合も多々あります。
30代の転職活動のポイント
アピールポイント
30代の転職活動のポイントを挙げるとしたら、「今までのスキルや経験を、入社後にどう活かすかをしっかり伝える」ということです。
面接では、履歴書や職務経歴書には書ききれない具体的な内容を話し、この会社でも能力が発揮できるだろうとイメージさせることが重要になります。
無理なく働けるかという視点
20代のころと比べるとがむしゃらに頑張ることもできなくなってきます。その会社で長く働けそうかという判断基準も持ち、働き方や社風などについても調べながら転職活動を進めていくことをおすすめします。
30代の転職、何回までOK?
納得のできる理由があるのであれば回数はそれほど問題にはなりませんが、おおよその基準として、20代のころも含めて転職は3社までという人もいます。
もし転職の回数が多くて不安という人は、納得のいく退職理由をスムーズに話せるようにしておくことに加え、採用した後にどの程度のパフォーマンスを発揮できるかについてもアピールできるように、事前準備をしておくことが大切です。
以上が30代におすすめの転職サイトの紹介となります。
転職サイトは多くの人が複数を併用して進めていますので、どの方法で進めるかを選ぶ必要もありません。状況に応じて、やりやすい方法をその都度選択してもらえればと思います。
広告